リスクオン・リスクオフとは、金融市場で投資家がどの程度リスクを取ろうとしているかを表す言葉です。
景気や企業業績への期待が高まり、株式などへ積極的に資金が向かう状態を「リスクオン」といいます。
反対に、景気後退、金融不安、地政学リスクなどへの警戒から、安全性や換金しやすさが重視される状態を「リスクオフ」といいます。
FXでは、市場心理の変化によって、円、米ドル、豪ドルなどの強弱が変わることがあります。
ただし、リスクオンなら必ず円安、リスクオフなら必ず円高になるわけではありません。金融政策、金利差、経済指標など、ほかの材料が優先される場合もあります。
この記事では、リスクオン・リスクオフの基本、起こりやすい材料、為替相場への影響、株価・VIX指数・国債利回りなどを使った確認方法を初心者向けに解説します。
リスクオン・リスクオフとは
リスクオンとは
リスクオンとは、投資家が相場の先行きに比較的前向きになり、値上がりや高い収益が期待できる資産へ積極的に資金を振り向ける状態です。
景気や企業業績の改善が期待されると、投資家は損失を避けることよりも、利益を得ることを重視しやすくなります。
一般的には、次のような資産や通貨が買われることがあります。
- 株式
- 新興国資産
- 高利回り債券
- 豪ドルなどの景気敏感通貨
- 高金利通貨
一方、資金調達に使われていた円が売られ、ドル円やクロス円が上昇する場合があります。
リスクオフとは
リスクオフとは、投資家が損失への警戒を強め、価格変動の大きい資産を売って、安全性や流動性が意識される資産へ資金を移す状態です。
景気後退、金融不安、戦争などへの懸念が強まると、利益を狙うことよりも、資産を守ることが優先されます。
一般的には、次のような動きが意識されます。
- 株式や高利回り資産が売られる
- 豪ドルなどの景気敏感通貨が売られる
- 円や米ドルが買われる
- 信用力が高いと考えられる国債が買われる
- 金が買われることがある
ただし、市場の混乱が非常に大きい場合は、現金を確保するために国債や金まで売られることがあります。
市場心理の強弱を表す言葉
リスクオン・リスクオフには、公式に定められた数値基準はありません。
株価が何%上昇すればリスクオン、VIX指数がいくつになればリスクオフと、機械的に決まるものではありません。
また、市場は常に完全なリスクオンか、完全なリスクオフのどちらかに分かれるわけでもありません。
たとえば、株式市場ではリスクオンでも、為替市場では金融政策の違いによって米ドルが買われることがあります。
リスクオン・リスクオフは、株式、債券、為替、商品など、複数の市場における資金の流れを整理するための考え方です。
リスクオンになりやすい主な材料
景気や企業業績の改善
GDP、PMI、雇用統計、小売売上高などが市場予想を上回ると、景気や企業業績への期待が高まることがあります。
景気改善が意識されれば、株式や景気敏感通貨へ資金が向かい、リスクオンになる場合があります。
企業決算が予想を上回り、今後の業績見通しも引き上げられた場合も、株式市場を支える材料になります。
ただし、経済指標が強すぎると、インフレや利上げへの警戒から株価が下落することがあります。
経済指標の数字だけでなく、その結果によって金融政策の見通しがどう変化したのかを確認しましょう。
GDPの基本については「GDPとは?」、企業の景況感を示すPMIについては「PMIとは?」の記事で詳しく解説しています。
インフレ鈍化と金融緩和への期待
インフレが落ち着くと、中央銀行が政策金利を高く維持する必要性が低下し、将来の利下げが意識されることがあります。
金利低下によって企業や家計の借入負担が軽くなれば、景気や株価を支える材料になります。
一般的には、次のような流れが考えられます。
インフレ鈍化
→ 利上げ観測の後退・利下げ期待
→ 市場金利の低下
→ 株価上昇
→ リスクオン
ただし、景気が急速に悪化したために利下げ観測が強まっている場合は、株価が上昇せず、リスクオフが続くことがあります。
利下げが予想されているかだけでなく、なぜ利下げが必要と考えられているのかを確認することが大切です。
金融不安や地政学リスクの後退
銀行不安、戦争、貿易摩擦、政情不安などへの懸念が弱まると、投資家が再びリスクを取りやすくなります。
金融機関への支援策、停戦交渉の進展、政治的な混乱の収束などが報じられると、株価が上昇し、安全性を重視して買われていた通貨や国債が売られる場合があります。
ただし、問題が完全に解決していなければ、一時的なリスクオンで終わることもあります。
リスクオフになりやすい主な材料
景気後退や企業業績悪化への警戒
GDPのマイナス成長、PMIの悪化、失業率の上昇、個人消費の減速などが続くと、景気後退への警戒が強まります。
企業の売上や利益が減少すると予想されれば、株式や景気に敏感な通貨が売られる可能性があります。
FXでは、豪ドルなどが売られ、円や米ドルが買われることがあります。
一方、景気悪化によって利下げ期待が強まり、株価が反発する場合もあります。景気への不安と金融緩和への期待のどちらが強いかを確認しましょう。
インフレ再加速と金利上昇
インフレが再び加速すると、中央銀行が高い政策金利を長く維持したり、追加利上げを行ったりする可能性があります。
金利上昇は企業や家計の借入負担を増やし、景気や株価の下押し材料になることがあります。
この場合は、次のような流れが考えられます。
インフレ再加速
→ 高金利長期化・追加利上げへの警戒
→ 国債利回り上昇
→ 株価下落
→ リスクオフ
景気不安によるリスクオフでは国債が買われやすくなりますが、インフレ不安によるリスクオフでは、国債が売られて利回りが上昇する場合があります。
金融不安・地政学リスク・市場急落
銀行の経営不安、企業の債務問題、戦争、経済制裁、政情不安などもリスクオフの原因になります。
金融機関や企業の資金調達が難しくなると、景気への悪影響が警戒され、株式や高利回り資産が売られることがあります。
また、株価が急落すると、投資家が損失を抑えるためにポジションを縮小し、別の資産にも売りが広がる場合があります。
レバレッジを利用した取引では、証拠金を確保するための売却が重なり、市場の混乱がさらに大きくなることもあります。
リスクオン・リスクオフで動きやすい資産と通貨
一般的に意識される動きを整理すると、次のようになります。
| 資産・通貨 | リスクオンで意識されやすい動き | リスクオフで意識されやすい動き |
|---|---|---|
| 株式 | 買われやすい | 売られやすい |
| 豪ドルなどの景気敏感通貨 | 買われることがある | 売られることがある |
| 円 | 売られることがある | 買い戻されることがある |
| 米ドル | 売られる場合がある | 流動性需要から買われることがある |
| 国債 | 売られる場合がある | 信用力の高い国債が買われることがある |
| 金 | 状況によって異なる | 安全性が意識されて買われることがある |
この表は一般的な傾向です。実際の値動きは、金融政策、金利差、経済指標、市場の混乱の原因によって変化します。
株式や景気敏感通貨
豪ドルやニュージーランドドルなどは、世界景気の影響を受けやすい「景気敏感通貨」として扱われることがあります。
また、豪ドル、カナダドル、NZドルなどは、資源や農産物の輸出と国内経済の結びつきが強いことから、「資源国通貨」や「コモディティ通貨」とも呼ばれます。
豪ドル・カナダドル・NZドルの特徴や、鉄鉱石・原油・乳製品などの商品価格が通貨へ影響する仕組みについては、「資源国通貨とは?」の記事で詳しく解説しています。
特に豪ドルは、オーストラリア経済だけでなく、中国経済や鉄鉱石などの資源価格からも影響を受けます。
世界景気や中国の資源需要への期待が高まれば、豪ドルを支える材料になります。
反対に、中国経済が弱い場合やRBAの利下げ観測が強い場合には、株価が上昇していても豪ドルが買われないことがあります。
中国経済と豪ドルの関係については、「中国経済指標はなぜ豪ドルに影響する?」の記事で詳しく解説しています。
円とキャリートレードの巻き戻し
市場が安定しており、円がほかの主要通貨より相対的に低金利とみなされる局面では、円で資金を調達し、高金利通貨や海外資産へ投資する取引が行われることがあります。
このように、相対的に金利の低い通貨で資金を調達し、金利や収益性の高い通貨・資産へ投資する取引をキャリートレードといいます。
リスクオンでは、円を売って高金利通貨や株式を買う動きが増え、円安になる場合があります。
反対に、リスクオフでは、投資家が高金利通貨や株式を売り、調達した円を返すために円を買い戻します。
高金利通貨や海外資産を売る
→ 円売りポジションを解消する
→ 円を買い戻す
→ 円高が進むことがある
ただし、日米金利差、日銀の金融政策、日本の経済状況などによっては、リスクオフでも円が買われない場合があります。
米ドル・国債・金
米ドルは、国際的な貿易、決済、資金調達で広く使われています。
金融市場の混乱が大きくなると、企業や投資家が現金を確保するために米ドルを求めることがあります。
そのため、深刻なリスクオフでは、金利差よりも米ドルの流動性が重視され、米ドルが主要通貨に対して買われる場合があります。
信用力が高いと考えられる国の国債も、安全性が意識される場面で買われることがあります。
国債が買われると、一般的には国債価格が上昇し、利回りは低下します。
金も安全性が意識される資産ですが、米ドル、実質金利、インフレなどの影響も受けるため、リスクオフなら必ず上昇するわけではありません。
円・米ドル・スイスフランなどの安全通貨と、国債・金などの安全資産は、似た場面で注目されますが、同じものではありません。代表的な安全通貨の特徴、安全資産との違い、リスクオフ時の通貨ペアの見方については、「安全通貨とは?」の記事で詳しく解説しています。
リスクオン・リスクオフが為替相場に与える影響
クロス円は市場心理の影響を受けやすい
クロス円とは、日本円を含み、米ドルを含まない通貨ペアです。
代表的なクロス円には、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などがあります。
リスクオンでは、相手通貨が買われ、円が売られることで、クロス円が上昇する場合があります。
反対に、リスクオフでは、相手通貨が売られ、円が買われることで、クロス円が大きく下落することがあります。
豪ドル円は、豪ドル側が世界景気、中国経済、資源価格の影響を受け、円側が市場心理やキャリートレードの巻き戻しから影響を受けます。
そのため、リスクオン・リスクオフの変化が比較的表れやすい通貨ペアと考えられることがあります。
ただし、RBAや日銀の金融政策など、個別の材料も確認する必要があります。
クロス円の仕組みについては、「クロス円とは?」の記事で詳しく解説しています。
ドル円は米ドルと円のどちらが強いかで決まる
リスクオフでは、米ドルと円が同時に買われることがあります。
そのため、ドル円が上昇するか下落するかは、どちらの通貨がより強く買われているかによって変わります。
たとえば、景気不安によって米国債利回りが低下し、円売りポジションの解消が進めば、円買いが優勢になり、ドル円が下落する場合があります。
一方、世界的な金融不安によって米ドルの資金需要が急増すれば、米ドル買いが優勢になり、ドル円が上昇する可能性があります。
また、為替介入や介入観測によって、ドル円やクロス円が急変することもあります。
円買い・円売り介入の仕組みや取引時の注意点については、「為替介入とは?」の記事で詳しく解説しています。
ドルストレートでは米ドル需要を確認する
ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルなどのドルストレートでは、相手通貨だけでなく、米ドル全体の強弱を確認します。
リスクオフによる米ドル買いが強まると、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルが下落する場合があります。
反対に、市場不安が後退して米ドルが売られれば、ドルストレートが上昇することがあります。
ただし、ECB、BOE、RBAなどの金融政策や、それぞれの国・地域の経済指標も値動きへ影響します。
リスクオン・リスクオフを判断する主な市場指標
株価とVIX指数
株価は、市場参加者が積極的にリスクを取っているかを確認する代表的な材料です。
主に次の株価指数が注目されます。
- S&P500
- NASDAQ
- 日経平均株価
- 欧州の主要株価指数
- 中国・香港の主要株価指数
複数の地域で株価が上昇していれば、世界的なリスクオンが意識される場合があります。
反対に、主要国の株価が同時に下落していれば、リスクオフが広がっている可能性があります。
VIX指数は、S&P500のオプション価格をもとに算出される予想変動率です。
一般的には、次のように整理できます。
- 株高・VIX低下:リスクオンが意識されやすい
- 株安・VIX上昇:リスクオフが意識されやすい
ただし、一部の大型株だけが上昇している場合や、VIXだけが一時的に動いている場合もあるため、ほかの市場と組み合わせて確認しましょう。
国債利回りと米ドル
株価が下落しているときは、国債利回りの方向を確認します。
景気後退への警戒が原因であれば、安全性が意識される国債が買われ、利回りが低下する場合があります。
株安
+国債利回り低下
=景気不安によるリスクオフの可能性
一方、インフレ再加速や財政不安が原因であれば、株式と国債が同時に売られ、利回りが上昇する場合があります。
株安
+国債利回り上昇
=インフレ・財政不安によるリスクオフの可能性
米ドル指数やユーロドル、ポンドドルなども確認し、米ドルが主要通貨全体に対して買われているかを見ます。
米国債の価格と利回りの関係については「米国債利回りとは?」、米ドル指数の見方については「ドルインデックスとは?」の記事で詳しく解説しています。
金と原油
金は、地政学リスクや通貨への不安が強まると買われることがあります。
ただし、金価格は米ドル、実質金利、インフレ、中央銀行の購入などからも影響を受けます。
金が上昇しているだけで、リスクオフと判断することはできません。
原油価格は、上昇した原因を確認することが大切です。
世界景気の改善による需要増加で原油が上昇している場合は、リスクオンの材料になることがあります。
一方、戦争や制裁などによる供給不安で上昇している場合は、インフレや景気悪化への警戒からリスクオフにつながることがあります。
原油価格は、主要な原油輸出国であるカナダの通貨にも影響します。ただし、需要増加による原油高と供給不安による原油高では、カナダドルの反応が異なることがあります。原油価格とカナダドル、米ドル/カナダドルの関係については、「原油価格がカナダドルに影響する理由とは?」の記事で詳しく解説しています。
リスクオン・リスクオフを判断するときの注意点
一つの市場だけで判断しない
株価が上昇していても、市場全体がリスクオンとは限りません。
一部の大型企業だけが買われていたり、利下げ期待によって株価だけが上昇していたりする場合があります。
株価だけでなく、次の市場も確認しましょう。
- VIX指数
- 国債利回り
- 米ドル
- 円
- 豪ドル
- 金
- 原油
複数の市場が同じ方向を示しているほど、資金の流れを判断しやすくなります。
値動きの原因によって反応が異なる
同じ株安でも、原因によって国債、為替、商品の動きは異なります。
| 株安の主な原因 | 意識される可能性がある動き |
|---|---|
| 景気後退への警戒 | 国債買い・利回り低下、円や米ドル買い |
| インフレ再加速 | 国債売り・利回り上昇、米ドル買い |
| 金融不安 | 現金・米ドル需要の増加 |
| 地政学リスク | 金や原油の上昇、株安 |
| 企業業績の悪化 | 該当する国や業種の株安 |
「株価が下落した」という結果だけでなく、何が値動きの原因になったのかを確認しましょう。
短期的な反応と中長期の基調を分ける
ニュース直後には、一時的に大きなリスクオフになることがあります。
しかし、数時間後や翌日には市場が落ち着き、元の流れへ戻る場合があります。
反対に、景気後退や金融不安が長期化すれば、リスクオフが数週間以上続くこともあります。
短期的な値動きと、中長期的な市場環境を分けて考えることが大切です。
FX初心者がリスクオン・リスクオフを確認する手順
リスクオン・リスクオフを確認するときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 株価とVIX指数を確認する
株価が上昇してVIXが低下しているのか、株価が下落してVIXが上昇しているのかを確認します。 - 米国債利回りを確認する
株安と同時に利回りが低下していれば景気不安、上昇していればインフレや財政不安が意識されている可能性があります。 - 米ドル・円・豪ドルの強弱を確認する
複数の通貨ペアを見て、米ドルや円への資金避難、豪ドルなど景気敏感通貨からの資金流出が起きているかを確認します。 - 金と原油を確認する
金の安全資産需要や、原油が需要増加と供給不安のどちらで動いているのかを確認します。 - 値動きの原因となったニュースを確認する
景気、インフレ、中央銀行、金融不安、地政学リスクのうち、どの材料が中心なのかを整理します。
最後に、複数の市場が同じ方向を示しているかを確認しましょう。
リスクオン・リスクオフに関するよくある質問
リスクオンでは必ず円安、リスクオフでは必ず円高になりますか?
必ずそのように動くわけではありません。
日銀の金融政策、日米金利差、為替介入への警戒などが優先される場合があります。
実際に円が複数の通貨に対して買われているかを確認しましょう。
リスクオフでは米ドルと円のどちらが買われますか?
市場混乱の原因によって異なります。
円売りポジションの解消が中心なら円、世界的な資金不足や金融不安が中心なら米ドルが強く買われることがあります。
両方が同時に買われる場合もあります。
豪ドルはなぜ市場心理の影響を受けやすいのですか?
豪ドルは、世界景気、中国経済、資源需要、株価などから影響を受けやすいためです。
ただし、RBAの金融政策など、オーストラリア固有の材料が優先される場合もあります。
株価やVIX指数だけで判断できますか?
株価やVIX指数だけでは判断できません。
国債利回り、米ドル、円、豪ドル、金、原油と、値動きの原因を組み合わせて確認します。
まとめ|複数の市場を確認してリスクオン・リスクオフを判断しよう
リスクオンとは、投資家が積極的にリスクを取り、株式や高利回り資産などへ資金を振り向ける状態です。
リスクオフとは、景気後退、金融不安、地政学リスクなどへの警戒から、安全性や流動性を重視する状態です。
一般的には、リスクオンでは株式や豪ドルなどが買われ、円が売られることがあります。
リスクオフでは株式や豪ドルなどが売られ、円、米ドル、国債、金などが買われることがあります。
ただし、資産や通貨の反応は固定されていません。
リスクオフでも円が買われない場合や、米ドルと円が同時に買われる場合があります。インフレが原因の株安では、国債が売られて利回りが上昇することもあります。
リスクオン・リスクオフを判断するときは、株価だけでなく、VIX指数、国債利回り、米ドル、円、豪ドル、金、原油を組み合わせて確認しましょう。
市場がどちらの状態にあるかだけでなく、値動きの原因となった材料を確認することが大切です。

