JOLTS求人件数は、アメリカの非農業部門における求人状況を確認できる月次の雇用指標です。
求人件数だけでなく、採用件数、自発的離職、解雇・レイオフなども公表されるため、企業の労働需要や労働者の転職意欲を幅広く確認できます。
FX市場では、結果が市場予想を上回ったか、下回ったかによって、FRBの金融政策見通しや米国債利回りが変化し、米ドルやドル円が動くことがあります。
この記事では、JOLTS求人件数の基本、求人・採用・離職の見方、ほかの米雇用指標との違い、FXやドル円への影響を初心者向けに解説します。
JOLTS求人件数とは
JOLTSは、アメリカの非農業部門における求人、採用、離職などを調査する雇用指標です。
正式名称は「Job Openings and Labor Turnover Survey」で、米労働省労働統計局が毎月公表しています。
日本の経済指標カレンダーでは、「JOLTS求人件数」や「JOLTS求人労働異動調査」などと表示されることがあります。
アメリカの求人・採用・離職を示す雇用指標
JOLTSでは、企業がどの程度の人材を募集しているのか、実際に何人を採用したのか、何人が退職・解雇されたのかを確認できます。
米雇用統計が雇用者数や失業率を中心に確認する指標であるのに対し、JOLTSは企業の労働需要や労働者の移動を確認できる点が特徴です。
求人件数は企業の労働需要を確認する材料になる
JOLTS求人件数は、企業が募集している未充足の求人の数を示します。
求人件数が多ければ、企業が人材を必要としており、労働需要が強い可能性があります。
反対に、求人件数の減少が続いていれば、企業の採用意欲や労働需要が弱まっている可能性があります。
ただし、求人を出していても、企業と求職者の条件が合わず、実際の採用に結びつかない場合があります。
そのため、求人件数だけでなく、採用件数や離職に関する項目も確認することが大切です。
JOLTSは毎月発表される
JOLTSは毎月発表されます。
発表日と対象月には時間差があるため、具体的な発表日、日本時間、対象月は経済指標カレンダーで確認しましょう。
JOLTSで確認する主な項目
JOLTSでは、求人件数だけでなく、求人率、採用件数、自発的離職、解雇・レイオフなども確認できます。
求人件数
求人件数は、企業が募集している未充足の求人の数を示します。
JOLTSの中では、FX市場で特に注目されやすい項目です。
求人件数が市場予想を上回れば、企業の労働需要が予想より強いと判断される場合があります。
反対に、市場予想を下回れば、採用意欲の低下や労働市場の減速が意識されることがあります。
求人率
求人率は、雇用者数と求人件数の合計に占める求人件数の割合です。
求人件数はアメリカ全体の求人の数を示しますが、求人率を見ると、雇用規模に対する求人需要の強弱を比較しやすくなります。
求人件数と求人率がともに上昇していれば、企業の労働需要が強いと判断される場合があります。
反対に、両方が低下していれば、採用意欲が弱まっている可能性があります。
採用件数・採用率
採用件数は、その月に企業が新たに雇用した人数を示します。
求人件数が多くても、採用件数が増えているとは限りません。
求人件数が高水準なのに採用が伸びていない場合には、企業が求める人材と求職者の技能や条件が合っていない可能性があります。
採用率も確認することで、企業が実際にどの程度の人材を雇用できているのかを判断しやすくなります。
自発的離職者数・自発的離職率
自発的離職は、労働者が自らの意思で仕事を辞めた人数を示します。
自発的離職率が高いときは、労働者がより良い賃金や条件の仕事へ転職できると考えている可能性があります。
そのため、自発的離職率の上昇は、労働者の転職意欲や労働市場への自信が強いことを示す場合があります。
反対に、自発的離職率が低下していれば、転職に慎重になる人が増え、労働市場の勢いが弱まっている可能性があります。
ただし、離職には個人ごとにさまざまな理由があるため、自発的離職率だけで雇用環境を判断することはできません。
解雇・レイオフ件数
解雇・レイオフ件数は、企業側の都合によって雇用関係が終了した人数を示します。
解雇・レイオフ件数の増加が続いていれば、企業業績の悪化や人員削減の広がりが意識される場合があります。
求人件数が減少し、同時に解雇・レイオフ件数が増えていれば、労働市場の悪化を示す可能性が高まります。
総離職者数
総離職者数は、その月に仕事を離れた人の総数です。
主に次の項目が含まれます。
・自発的離職
・解雇・レイオフ
・その他の離職
総離職者数だけでなく、どの種類の離職が増えたのかを確認することが重要です。
自発的離職の増加と、解雇・レイオフの増加では、労働市場に対する意味が異なります。
JOLTS求人件数とほかの米雇用指標の違い
JOLTS、米雇用統計、ADP雇用統計、米新規失業保険申請件数は、いずれもアメリカの雇用環境を確認する指標です。
ただし、それぞれ確認できる内容が異なります。
JOLTSは企業の求人・採用・離職を確認する
JOLTSは、求人、採用、自発的離職、解雇・レイオフなどから、企業の労働需要と人の移動を確認する指標です。
米雇用統計は雇用者数・失業率・賃金を確認する
米雇用統計は、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給などから、アメリカの雇用環境を幅広く確認する指標です。
非農業部門雇用者数や失業率、平均時給の詳しい見方については、「米雇用統計とは?」の記事で解説しています。
ADP雇用統計は民間雇用者数の変化を示す
ADP雇用統計は、給与支払いデータをもとに、民間部門の雇用者数の変化を確認する指標です。
業種別・企業規模別の雇用や米雇用統計との違いについては、「ADP雇用統計とは?」の記事で詳しく解説しています。
米新規失業保険申請件数は新たな失業を確認する
米新規失業保険申請件数は、新たに失業保険を申請した件数から、直近の失業動向を確認する週次指標です。
継続受給者数や4週移動平均、ドル円への影響については、「米新規失業保険申請件数とは?」の記事で詳しく解説しています。
4つの雇用指標を比較する
| 指標 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| JOLTS | 求人、採用、自発的離職、解雇・レイオフ |
| 米雇用統計 | 雇用者数、失業率、平均時給 |
| ADP雇用統計 | 民間部門の雇用者数の変化 |
| 米新規失業保険申請件数 | 新たな失業保険申請件数 |
一つの指標だけで判断せず、複数の雇用指標が同じ方向を示しているかを確認することが大切です。
JOLTS求人件数がFX・ドル円に影響する理由
JOLTS求人件数は、アメリカの労働需要やFRBの金融政策に対する市場予想を変化させるため、米ドルやドル円に影響することがあります。
アメリカの労働需要を判断する材料になる
求人件数が市場予想を上回れば、アメリカの労働需要が予想より強いと判断される場合があります。
企業の採用意欲が強ければ、雇用や個人消費が底堅く推移するとの見方につながることがあります。
反対に、求人件数が市場予想を下回れば、企業の採用意欲の低下や景気減速が意識される場合があります。
賃金やインフレへの見方が変化する
求人件数に対して働き手が不足すると、企業は人材を確保するために賃金を引き上げる可能性があります。
賃金上昇が続けば、企業の人件費が増え、サービス価格などのインフレ圧力につながる場合があります。
そのため、求人件数の高止まりは、労働市場の需給が引き締まり、インフレ圧力が残っているとの見方につながることがあります。
反対に、求人件数や自発的離職率の低下が続けば、賃金上昇圧力が弱まりつつあると判断される場合があります。
FRBの金融政策予想が変化する
FRBは、物価の安定と雇用の最大化を政策目標としているため、雇用環境も確認しながら金融政策を判断します。
JOLTS求人件数が強ければ、労働市場が底堅く、FRBが利下げを急がないとの見方が強まる場合があります。
反対に、求人件数や採用、自発的離職率の低下が続けば、労働市場の過熱が弱まり、利下げ観測が強まることがあります。
ただし、FRBはJOLTSだけで政策を決定するわけではありません。
米雇用統計、米新規失業保険申請件数、米CPI、PCEデフレーター、GDPなど、複数の指標を総合して判断します。
政策金利の変更が米ドルや為替相場に与える影響については、「政策金利とは?」の記事で詳しく解説しています。
米国債利回りの変化を通じてドル円が動く
JOLTSの結果によってFRBの金融政策予想が変化すると、米国債利回りも動きやすくなります。
強い結果によって利下げ観測が後退すれば、米国債利回りが上昇し、米ドルが買われる場合があります。
反対に、弱い結果によって利下げ観測が強まれば、米国債利回りが低下し、米ドルが売られることがあります。
ドル円を見るときは、JOLTSの結果だけでなく、発表後の米国債利回りも確認しましょう。
JOLTS求人件数の結果の見方
JOLTSを見るときは、前回値、市場予想、今回の結果を比較します。
そのうえで、求人率、採用件数、自発的離職率、解雇・レイオフ件数、前回値の改定を確認しましょう。
前回値・市場予想・結果を比較する
経済指標カレンダーには、一般的に次の数値が表示されます。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 前回値 | 前回発表された求人件数 |
| 市場予想 | 発表前に予想されている求人件数 |
| 結果 | 今回実際に発表された求人件数 |
為替相場では、前回から求人件数が増えたかだけでなく、市場予想との差が重視されます。
前回より求人件数が減っていても、市場予想を上回れば、強い結果と判断される場合があります。
反対に、前回より求人件数が増えていても、市場予想を下回れば、弱い結果と受け止められることがあります。
求人・採用・離職の組み合わせを確認する
求人件数と求人率がともに上昇していれば、企業の労働需要が強いと判断される場合があります。
ただし、求人件数が多くても採用件数が伸びていなければ、企業が必要な人材を確保できていない可能性があります。
自発的離職率が上昇していれば、労働者の転職意欲や労働市場への自信が強い可能性があります。
反対に、自発的離職率が低下し、解雇・レイオフ件数が増加していれば、雇用環境の悪化が意識される場合があります。
一つの項目だけではなく、求人、採用、自発的離職、解雇・レイオフが同じ方向を示しているかを確認しましょう。
前回値の改定を確認する
JOLTSの数値は、過去に発表された結果が後から修正されることがあります。
今回の求人件数が強くても、前回値が大幅に下方修正されていれば、労働需要の強さは見た目ほど明確ではない可能性があります。
反対に、今回の結果が弱くても、前回値が上方修正されていれば、市場の反応が限定される場合があります。
今回値と前回値の改定を組み合わせて確認しましょう。
単月だけでなく数か月の流れを確認する
JOLTSは月ごとの変動があるため、一度の結果だけで労働市場の方向を決めつけないことが重要です。
求人件数、求人率、採用件数、自発的離職率などが、数か月続けて上昇しているのか、低下しているのかを確認しましょう。
JOLTS求人件数とドル円の基本的な関係
JOLTS求人件数とドル円には、一般的に次のような関係があります。
ただし、実際の値動きが必ずこのとおりになるわけではありません。
市場予想を上回るとドル高・円安が意識されることがある
求人件数が市場予想を上回ると、アメリカ企業の労働需要が予想より強いと判断される場合があります。
FRBの利下げ観測の後退や米国債利回りの上昇を通じて、米ドルが買われ、ドル円が上昇することがあります。
市場予想を下回るとドル安・円高が意識されることがある
求人件数が市場予想を下回ると、企業の採用意欲や労働需要の減速が意識される場合があります。
FRBの利下げ観測が強まり、米国債利回りが低下すれば、米ドルが売られ、ドル円が下落することがあります。
ただし、採用、自発的離職、解雇・レイオフ、前回値の改定によって、発表直後の値動きが反転する場合もあります。
強いJOLTS求人件数でもドル高にならない理由
JOLTS求人件数が市場予想を上回っても、必ずドル高・円安になるわけではありません。
強い結果が事前に織り込まれている
強い求人件数が事前に予想され、発表前から米ドルが買われている場合があります。
実際の結果が市場予想に近ければ、新しい買い材料にならず、ドル高が進まないことがあります。
発表後に利益確定の売りが出て、ドル円が下落する場合もあります。
採用や自発的離職の内訳が弱い
求人件数が市場予想を上回っていても、採用件数や自発的離職率が低下している場合があります。
求人が多くても、実際の採用や労働者の転職意欲が弱ければ、労働市場は求人件数ほど強くないと判断されることがあります。
解雇・レイオフ件数が増えている場合にも、強い求人件数の印象が弱まる可能性があります。
前回値が下方修正されている
今回の求人件数が強くても、前回値が大幅に下方修正されていれば、労働需要の強さが一部相殺される場合があります。
市場は今回値だけでなく、過去の結果を含めて労働市場の基調を判断します。
ほかの経済指標や金融政策が優先される
米雇用統計、米CPI、PCEデフレーター、FOMC、FRB関係者の発言などが強く意識されている場合には、JOLTSへの反応が限定されることがあります。
ドル円では、日銀の政策、日本の金利、為替介入への警戒、市場全体のリスク環境も影響します。
JOLTS発表前後の注意点
JOLTSの発表前後には、米ドルやドル円が短時間で動く場合があります。
対象となる月を確認する
JOLTSは、発表日より前の月の労働市場を示します。
発表時点の雇用状況と時間差があるため、対象月を確認することが大切です。
その後に発表された米雇用統計や米新規失業保険申請件数によって、労働市場の状況が変化している可能性もあります。
ほかの経済指標と同時刻に発表される場合がある
JOLTSと同じ時間帯に、別のアメリカの経済指標が発表される場合があります。
複数の指標が同時に発表されると、ドル円がどの結果へ反応したのか分かりにくくなることがあります。
JOLTSだけで値動きの理由を判断しないようにしましょう。
スプレッドやスリッページに注意する
市場予想との差が大きい場合には、米ドルやドル円が短時間で変動する可能性があります。
相場が急変すると、通常時よりスプレッドが広がることがあります。
また、注文した価格と実際に取引が成立した価格に差が生じる、スリッページが発生する場合もあります。
損切り注文を設定していても、指定した価格から離れた位置で約定する可能性があるため注意が必要です。
発表直後の取引を避ける選択肢もある
JOLTSの結果や発表直後の値動きを正確に予測することは困難です。
必ず取引を避けなければならないわけではありませんが、求人件数、採用、自発的離職、解雇・レイオフ、前回値の改定、米国債利回りを確認してから判断する方法もあります。
初心者は、発表直後の値動きを無理に追いかけず、資金管理を優先しましょう。
FX初心者がJOLTSを確認する手順
JOLTSを見るときは、発表前、発表後、市場反応の順に確認すると整理しやすくなります。
発表前に日時・前回値・市場予想を確認する
最初に、経済指標カレンダーで発表日、日本時間、対象月を確認します。
同じ時間帯に、ほかの重要な経済指標が発表されないかも確認しておきましょう。
発表前には、求人件数の前回値と市場予想も確認します。
発表後に求人・採用・離職を確認する
発表後は、求人件数が市場予想を上回ったのか、下回ったのかを確認します。
続いて、次の項目を確認しましょう。
・求人率
・採用件数・採用率
・自発的離職者数・自発的離職率
・解雇・レイオフ件数
複数の項目が同じ方向を示しているかを整理します。
前回値の改定と数か月の流れを確認する
前回の求人件数が上方修正・下方修正されていないかを確認します。
今回値だけでなく、求人件数や自発的離職率が数か月続けて上昇しているのか、低下しているのかも確認しましょう。
米国債利回りとドル円の反応を記録する
発表後の米国債利回りとドル円の動きを確認します。
米国債利回りが上昇し、ドル円も上昇していれば、市場が結果を強いと受け止めた可能性があります。
反対に、米国債利回りが低下し、ドル円も下落していれば、労働需要の減速やFRBの利下げ観測が意識された可能性があります。
記録する主な項目は次のとおりです。
・求人件数の前回値・市場予想・結果
・求人率
・採用件数・採用率
・自発的離職者数・自発的離職率
・解雇・レイオフ件数
・前回値の改定
・発表後の米国債利回りとドル円
記録を続けることで、強い求人件数でも毎回ドル高になるわけではないことが分かります。
JOLTS求人件数に関するよくある質問
JOLTSとは何の略ですか?
JOLTSは「Job Openings and Labor Turnover Survey」の略です。
アメリカの非農業部門における求人、採用、離職などを確認できる月次の雇用指標です。
JOLTS求人件数が市場予想を上回るとドル高になりますか?
必ずドル高になるわけではありません。
事前の織り込み、採用や離職の内訳、前回値の改定、米国債利回りなどによって、ドル円が下落する場合もあります。
求人件数と採用件数は何が違いますか?
求人件数は、企業が募集している未充足の求人の数です。
採用件数は、その月に企業が実際に新しく雇用した人数です。
求人が多くても、実際の採用が増えているとは限りません。
自発的離職率はなぜ注目されますか?
自発的離職率は、労働者の転職意欲や労働市場への自信を考える材料になるためです。
より良い仕事を見つけられると考える人が多ければ、自ら仕事を辞める人も増える可能性があります。
JOLTSと米雇用統計は同じですか?
同じものではありません。
JOLTSは、求人、採用、自発的離職、解雇・レイオフなどを確認する指標です。
米雇用統計は、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給などを確認する指標です。
JOLTSはいつ発表されますか?
JOLTSは毎月発表されます。
具体的な発表日、日本時間、対象月は、経済指標カレンダーで確認しましょう。
まとめ|求人件数だけでなく採用・離職の内訳も確認しよう
JOLTSは、アメリカの非農業部門における求人、採用、自発的離職、解雇・レイオフなどを確認できる月次の雇用指標です。
結果を見るときは、求人件数と市場予想の差だけでなく、求人率、採用件数、自発的離職率、解雇・レイオフ件数、前回値の改定も確認しましょう。
求人件数が市場予想を上回ればドル高・円安、下回ればドル安・円高が意識されることがありますが、必ずその方向へ動くわけではありません。
発表後は米国債利回りとドル円の反応を確認し、一度の求人件数だけでアメリカの雇用環境や為替の方向を決めつけないことが大切です。

