FXでは、1つのポジションごとの損失額を管理していても、複数のポジションを同時に持つことで、口座全体のリスクが大きくなることがあります。
たとえば、1つのトレードで1,000円までしか損失を許容していなくても、3つのポジションを同時に持ち、それぞれが損切りになれば、合計損失は3,000円になります。
また、異なる通貨ペアを取引していても、同じ通貨を同じ方向に売買している場合などは、複数のポジションが同時に損失になることがあります。
そのため、複数ポジションを持つときは、
- 各ポジションの想定損失額
- すべてのポジションの合計リスク
- 同じ通貨への偏り
- 通貨ペアの相関
などを確認することが大切です。
この記事では、FXで複数ポジションを持つときのリスクや合計リスクの計算方法、通貨ペアの相関、口座全体のリスクを管理する考え方を初心者向けに解説します。
FXで複数ポジションを持つリスクとは?
複数ポジションを持つこと自体が悪いわけではありません。
注意したいのは、1つずつのポジションだけを見て、口座全体でどの程度のリスクを取っているのかを把握していない状態です。
1つずつのリスクが小さくても合計すると大きくなる
たとえば、同時に3つのポジションを持っていて、それぞれ損切りになった場合の想定損失額が、
- ポジションA:1,000円
- ポジションB:1,000円
- ポジションC:1,000円
だったとします。
すべてが損切りになった場合の想定損失は、
1,000円+1,000円+1,000円=3,000円
です。
1つずつを見ると小さな損失でも、複数のポジションを同時に持てば合計リスクは大きくなります。
そのため、
「1つのトレードでいくらまで負けるか」だけでなく、「保有しているポジション全体ではいくらの損失になる可能性があるか」
まで確認する必要があります。
複数ポジションでは口座全体のリスクを見る
1回のトレードで許容する損失額を決めることは、資金管理の基本です。
1回のトレードでどの程度まで損失を許容するかについては「FXの許容損失は何%?1回の損失額と1%・2%ルールを初心者向けに解説」で詳しく解説しています。
しかし、複数ポジションを同時に持つ場合は、
個別ポジションのリスク
+
口座全体の合計リスク
の両方を見ることが大切です。
新しいポジションを追加するときも、そのトレードだけを見て判断するのではなく、すでに保有しているポジションを含めて考えます。
複数ポジションの合計リスクを計算する方法
複数ポジションのリスクを確認するときは、それぞれのポジションが損切りになった場合の想定損失額を確認します。
各ポジションの想定損失額を合計する
複数ポジションの合計リスクを確認するには、まずそれぞれのポジションについて、損切りになった場合の想定損失額を把握しておく必要があります。
許容損失額と損切り幅からロットを決める方法については「FXのロット計算方法|許容損失額と損切り幅からロットを決める方法を初心者向けに解説」で詳しく解説しています。
たとえば、次の3つのポジションを持っているとします。
| ポジション | 損切りになった場合の想定損失 |
|---|---|
| USD/JPY | 1,000円 |
| EUR/JPY | 1,500円 |
| GBP/USD | 1,000円 |
| 合計 | 3,500円 |
この場合、合計の想定損失額は3,500円です。
基本的には、
合計リスク = 各ポジションの想定損失額の合計
として確認できます。
ここでいう合計リスクは、各ポジションが想定した損切り水準まで動いた場合の損失額を単純に合計したものです。
通貨ペア同士の相関や同じ通貨への偏りについては、この金額とは別に確認します。
合計リスクを口座資金に対する割合でも確認する
合計リスクは、金額だけでなく口座資金に対する割合でも確認すると分かりやすくなります。
たとえば、
- 口座資金:10万円
- 合計想定損失:4,000円
なら、
4,000円 ÷ 10万円 × 100 = 4%
です。
この場合、複数ポジションの合計想定損失は口座資金の4%に相当します。
ただし、
「合計リスクは○%以内なら安全」
という、すべてのトレーダーに共通する絶対的な基準があるわけではありません。
重要なのは、新しいポジションを追加するたびに、口座全体でどの程度の損失を許容している状態なのかを確認することです。
実際の損失が想定額を超える場合もある
合計リスクを計算していても、実際の損失額が必ずその金額以内に収まるとは限りません。
たとえば、
などによって、設定していた損切り価格より不利な価格で約定することがあります。
複数ポジションを保有しているときに市場全体が急変すれば、複数のポジションで同時に想定以上の損失が発生する可能性もあります。
そのため、計算した合計リスクは資金管理上の想定額であり、実際の最大損失を保証するものではありません。
FXでは通貨ペアの相関にも注意する
複数の通貨ペアを取引するときは、損失額の合計だけでなく、それぞれのポジションがどの通貨の値動きに影響されやすいのかも確認します。
通貨ペアは完全に独立して動くとは限らない
USD/JPY、EUR/JPY、EUR/USDなどは別々の通貨ペアですが、それぞれが完全に独立して動いているわけではありません。
同じ通貨を含む場合、その通貨に影響する材料によって複数の通貨ペアが同時に動くことがあります。
また、
- 金融政策
- 経済指標
- 金利
- 市場全体のリスク環境
など、共通する要因の影響を受ける場合もあります。
そのため、通貨ペアが違うからといって、必ずリスクが分散されているとは限りません。
同じ通貨への偏りがあるとリスクが重なることがある
たとえば、
USD/JPYを買う
+
EUR/JPYを買う
という2つのポジションを持っているとします。
どちらも円が売られる方向へ動けば利益になりやすいポジションです。
反対に円が急上昇すれば、USD/JPYとEUR/JPYが同時に下落し、両方のポジションが損失になる可能性があります。
別の例として、
EUR/USDを買う
+
GBP/USDを買う
場合は、どちらも米ドルが下落する方向で利益になりやすいポジションです。
米ドルが急上昇すれば、両方が損失方向へ動く可能性があります。
ただし、同じ通貨を含むポジションでも、売買方向によってリスクの重なり方は異なります。
単に通貨ペア名を見るのではなく、どの通貨を買い、どの通貨を売っているのかまで確認することが大切です。
通貨ペアが違うだけで、リスクが分散されているとは限りません。
通貨ペアの相関は常に同じとは限らない
過去に似た値動きをしていた通貨ペアでも、将来も同じように動くとは限りません。
通貨ペアの関係は、
- 各国の金融政策
- 経済指標
- 金利
- 政治や地政学リスク
- 各国固有のニュース
などによって変化します。
そのため、
「過去に一緒に動いていたから、これからも必ず一緒に動く」
と考えることはできません。
初心者の方は相関を固定的に覚えるよりも、まずは現在のポジションで同じ通貨への売買方向が重なっていないかを確認すると分かりやすいでしょう。
含み益があるときのポジション追加にも注意する
保有中のポジションに含み益があると、
「利益が出ているから、もう1つポジションを増やしても大丈夫」
と考えることがあります。
しかし、含み益は相場変動によって減少することがあります。
相場が反転すれば、それまでの含み益が減る一方で、新しく追加したポジションでも損失が発生する可能性があります。
そのため、含み益だけを根拠にポジションを増やすのではなく、現在の口座資金や既存ポジションを含めた合計リスクを確認することが大切です。
複数ポジションと実効レバレッジの関係
複数ポジションを追加すると、口座全体で保有する取引金額も増えるため、実効レバレッジが高くなることがあります。
1つずつのポジションが小さくても、複数を同時に保有すれば口座全体のポジション量は増えます。
そのため、想定損失額だけでなく、口座資金に対してどの程度の取引量を保有しているのかも確認しましょう。
口座全体の総取引金額から実効レバレッジを計算する方法や、複数ポジションを持ったときのレバレッジ管理については「FXの実効レバレッジとは?計算方法とレバレッジ管理を初心者向けに解説」で詳しく解説しています。
複数ポジションのリスク管理を5ステップで整理
複数ポジションを持つときの確認手順を整理すると、次のようになります。
- 各ポジションの損切り位置を確認する
- 損切りになった場合の想定損失額を確認する
- すべてのポジションの想定損失額を合計する
- 同じ通貨への偏りや通貨ペアの相関を確認する
- 新しいポジションを追加しても許容できる合計リスクか確認する
複数ポジションでは、
1つずつ確認する
→ 合計する
→ 通貨の偏りを見る
→ 新しいポジションを追加できるか判断する
という順番で考えると分かりやすくなります。
まとめ|複数ポジションでは口座全体のリスクを見る
FXで複数ポジションを持つこと自体が悪いわけではありません。
重要なのは、それぞれのポジションだけでなく、口座全体でどの程度のリスクを取っているのかを把握することです。
複数ポジションを持つときは、
- 各ポジションの想定損失額
- すべてのポジションの合計リスク
- 同じ通貨への偏り
- 通貨ペアの相関
- 口座全体のポジション量
を確認しましょう。
また、通貨ペアの相関は固定ではなく、相場環境によって変化することがあります。
新しいポジションを追加するときは、「このトレードだけなら大丈夫」と考えるのではなく、既存ポジションを含めても許容できるリスクかどうかを確認することが大切です。

