豪雇用統計は、オーストラリアの雇用者数、失業率、労働参加率などから、労働市場の状況を確認する経済指標です。
一般的に、雇用者数が市場予想より増え、失業率が低下すれば、RBAの利下げ観測が後退し、豪ドル高材料になる場合があります。反対に、雇用環境の悪化は豪ドル安材料になることがあります。
ただし、雇用者数だけでは判断できません。
労働参加率の変化によって、雇用者数が増えても失業率が上昇することがあります。また、雇用増加の中心がフルタイムなのか、パートタイムなのかによっても評価が変わります。
さらに、発表前の織り込み、豪CPI、中国経済、資源価格、相手側の中央銀行などによって、想定どおりに動くとは限りません。
この記事では、豪雇用統計の主な項目、雇用者数・失業率・労働参加率の関係、RBAの金融政策や豪ドル相場への影響を初心者向けに解説します。
FXで注目される主な経済指標については、「FXで重要な経済指標とは?」の記事で詳しく解説しています。
豪雇用統計とは
ABSが毎月公表するオーストラリアの労働市場統計
豪雇用統計とは、オーストラリアの雇用や失業の状況を示す労働市場統計です。
オーストラリアの政府統計機関であるABSが、「Labour Force, Australia」として原則毎月公表しています。
調査対象は、オーストラリアに居住する15歳以上の民間人口です。雇用者数、失業率、労働参加率、不完全就業率、総労働時間などが公表されます。
豪雇用統計は複数の指標で構成される
「豪雇用統計」という一つの数値が発表されるわけではありません。
経済指標カレンダーでは、主に次の項目が注目されます。
- 雇用者数増減
- 失業率
- 労働参加率
- フルタイム雇用者数
- パートタイム雇用者数
- 不完全就業率
- 総労働時間
雇用者数だけでなく、失業率や労働参加率、雇用の内訳を組み合わせて判断することが大切です。
なお、賃金上昇率を示す賃金価格指数(WPI)は、月次の豪雇用統計とは別に四半期ごとに公表されます。RBAの金融政策を分析するときは、雇用統計と賃金指標を分けて確認しましょう。
豪雇用統計で確認する主な項目
雇用者数と雇用者数増減
雇用者数は、オーストラリアで仕事に就いている人の数です。
経済指標カレンダーでは、前月から何人増減したのかを示す「雇用者数増減」が特に注目されます。
一般的には、雇用者数が増加すれば企業の労働需要が強く、減少すれば労働市場が弱くなっている可能性があります。
ただし、雇用者数は月ごとの振れが大きくなる場合があります。今回の結果だけでなく、市場予想との差、前回値の改定、数か月の傾向も確認しましょう。
失業率
失業率は、労働力人口のうち、失業者が占める割合です。
仕事をしていない人が、すべて失業者として数えられるわけではありません。仕事を探しており、働き始められる状態にあることなどが条件になります。
一般的には、失業率の低下は労働市場の強さ、上昇は労働市場の弱まりを示す場合があります。
ただし、失業率は雇用者数だけでなく、仕事を探している人の増減からも影響を受けます。そのため、労働参加率と組み合わせて確認する必要があります。
労働参加率
労働参加率は、15歳以上の人口のうち、就業者と失業者を合わせた労働力人口が占める割合です。
現在働いている人だけでなく、仕事を探している人も労働力人口に含まれます。
労働参加率が上昇していれば、労働市場へ参加する人が増えたことを示します。反対に低下していれば、就業や求職活動から離れた人が増えた可能性があります。
失業率の変化を正しく判断するため、雇用者数と労働参加率をセットで確認しましょう。
フルタイム・パートタイム雇用
ABSでは、通常週35時間以上働く人や、調査対象週に35時間以上働いた人などをフルタイム雇用に分類します。通常の労働時間が週35時間未満で、調査対象週も35時間未満だった人などはパートタイム雇用に分類されます。
雇用者数全体が増えていても、フルタイム雇用が減少し、パートタイム雇用だけが増えている場合があります。
パートタイム雇用の増加が必ず弱い結果を意味するわけではありませんが、企業の労働需要や家計所得の強さを判断するときは、フルタイム・パートタイムの内訳も確認しましょう。
不完全就業率と総労働時間
不完全就業率は、すでに働いているものの、さらに長い時間働くことを希望し、追加で働ける人などが労働力人口に占める割合です。
失業率が低くても不完全就業率が高ければ、労働市場に十分活用されていない労働力が残っている可能性があります。
総労働時間は、雇用されている人が実際に働いた時間の合計です。
雇用者数が増えていても総労働時間が減少していれば、見出しの数字ほど労働需要が強くない場合があります。ABSの月次統計では、雇用、失業、参加率、不完全就業、労働時間をまとめて確認できます。
雇用者数・失業率・労働参加率の関係
豪雇用統計では、雇用者数と失業率が同じ方向の結果になるとは限りません。
| 発表内容 | 市場で意識されやすい見方 |
|---|---|
| 雇用者数が増加し、失業率が低下 | 労働市場は強い |
| 雇用者数が減少し、失業率が上昇 | 労働市場は弱い |
| 雇用者数が増加し、失業率も上昇 | 労働参加率の上昇などを確認 |
| 雇用者数が増えてもフルタイムが減少 | 見出しほど強くない可能性 |
| 失業率が低下し、労働参加率も低下 | 求職者の減少が影響した可能性 |
雇用者数が増えても失業率が上昇することがある
雇用者数が増えても、新しく仕事を探し始めた人がさらに多ければ、失業者数も増加します。
その結果、雇用者数の増加と失業率の上昇が同時に起こる場合があります。
このとき、労働参加率も上昇していれば、働く意思を持って労働市場へ参加した人が増えた可能性があります。
一時的に失業率を押し上げても、その後に就業者が増えれば、労働供給や経済活動を支える材料になります。
失業率は労働参加率と組み合わせて確認する
失業率が低下していても、労働参加率も低下している場合は注意が必要です。
雇用が増えたのではなく、仕事を探すことをやめて労働市場から離れた人が増えたことで、失業率が下がった可能性があります。
反対に、失業率が上昇しても、労働参加率と雇用者数がともに増えていれば、労働市場が全面的に悪化したとは限りません。
失業率だけを見て強い・弱いと決めつけず、雇用者数と労働参加率を組み合わせて判断しましょう。
豪雇用統計の見方と確認する順番
豪雇用統計を見るときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 発表日時・前回値・市場予想を確認する
- 雇用者数増減を確認する
- フルタイム・パートタイムの内訳を確認する
- 失業率と労働参加率を確認する
- 不完全就業率・総労働時間・改定値を確認する
- RBAの政策観測と豪州金利を確認する
- 豪ドル相場の反応を確認する
前回値・市場予想・改定値を確認する
豪雇用統計では、前月から雇用者数が増えたか減ったかだけでなく、市場予想との差が重要です。
雇用者数が増加していても、市場予想を下回れば、予想より弱い結果と判断される場合があります。
反対に、雇用者数が減少していても、市場がさらに大きな減少を予想していた場合は、予想ほど悪くない結果と受け止められることがあります。
FX市場では、季節による変動を調整した数値が主に注目されます。過去の数値が修正される場合もあるため、前回値の改定も確認しましょう。
経済指標の前回値、市場予想、結果、改定値を比較する方法については、「経済指標の前回値・予想値・結果・改定値の見方」の記事で詳しく解説しています。
豪雇用統計では、雇用者数、失業率、労働参加率、フルタイム・パートタイムの内訳が異なる方向を示すことがあります。
各項目を組み合わせ、発表後はRBAの政策観測、豪州金利、豪ドル相場の反応まで確認しましょう。
豪雇用統計とRBA・豪ドル相場の関係
RBAは、物価の安定と完全雇用を金融政策の目標としています。
完全雇用は失業率がゼロの状態ではなく、低く安定したインフレと両立する範囲で、労働力が十分に活用されている状態です。RBAは失業率だけでなく、雇用、労働参加率、不完全就業率、賃金などの幅広い情報から労働市場を判断します。
雇用者数の増加、失業率の低下、フルタイム雇用の増加がそろえば、RBAの利下げ観測が後退し、豪州金利の上昇を通じて豪ドル高材料になる場合があります。
反対に、雇用者数の減少や失業率・不完全就業率の上昇が続けば、利下げ観測が強まり、豪ドル安材料になることがあります。
ただし、一度の雇用統計だけでRBAの金融政策が決まるわけではありません。
豪CPI・賃金・景気も組み合わせて確認する
RBAは、豪雇用統計だけで政策金利を決めるわけではありません。
主に次の材料も組み合わせて確認します。
- 総合CPI
- トリム平均
- 賃金上昇率
- GDP
- 個人消費
- 住宅市場
- 中国経済
- RBAの政策声明や総裁発言
雇用統計が強くても、総合CPIやトリム平均の鈍化が続いていれば、RBAの政策見通しが大きく変化しない場合があります。
反対に、雇用と賃金が強く、トリム平均も高止まりしていれば、RBAが利下げに慎重になる可能性があります。RBAの金融政策は、金利を通じて需要、雇用、インフレへ働きかけます。
総合CPI・トリム平均の違いや、RBAの政策観測、豪ドル相場への影響については、「豪CPIとは?」の記事で詳しく解説しています。
RBAの役割、キャッシュレート、金融政策理事会、政策声明などについては、「RBAとは?」の記事で詳しく解説しています。
通貨ペアでは相手側の中央銀行も比較する
FXでは、豪雇用統計だけでなく、通貨ペアを構成する相手側の金融政策も確認します。
| 通貨ペア | 主に比較する中央銀行 |
|---|---|
| 豪ドル米ドル | RBAとFRB |
| 豪ドル円 | RBAと日銀 |
| ユーロ豪ドル | RBAとECB |
| ポンド豪ドル | RBAとBOE |
豪雇用統計が強くても、FRBがRBA以上にタカ派的であれば豪ドル米ドルが下落する場合があります。また、日銀の利上げ観測が強まれば豪ドル円、ECBやBOEの利下げ観測が後退すればユーロ豪ドルやポンド豪ドルにも影響します。
各国の金融政策を通貨ペアごとに比較する方法については、「各国の政策金利を比較するときの見方とは?」の記事で詳しく解説しています。
豪雇用統計が強くても豪ドル高にならない理由
雇用者数・失業率・内訳が異なる方向を示す
雇用者数が市場予想を上回っても、失業率が上昇し、フルタイム雇用が減少していれば、見出しほど強い結果ではない可能性があります。
反対に、雇用者数が弱くても、失業率の低下や総労働時間の増加が確認されれば、豪ドル売りが限定される場合があります。
雇用者数、失業率、労働参加率、フルタイム・パートタイムの内訳を組み合わせて判断しましょう。
強い結果が織り込み済みでRBAの見通しも変わらない
市場が強い豪雇用統計を事前に予想している場合、発表前から豪ドルが買われていることがあります。
実際の結果が市場予想どおりで、RBAの政策見通しも変わらなければ、新しい豪ドル買い材料にならない可能性があります。
雇用統計が強くても、豪CPIやトリム平均が鈍化していれば、RBAの利下げ観測が大きく後退しないこともあります。
また、発表前に豪ドルが大きく上昇していれば、発表後の利益確定によって売られる場合があります。
中国経済・資源価格・リスク環境が優先される
オーストラリアは中国との貿易や資源輸出との関係が深いため、豪ドルは中国経済や鉄鉱石などの資源価格から影響を受けることがあります。
豪ドルは、鉄鉱石や石炭などの輸出とオーストラリア経済の結びつきが強いことから、代表的な資源国通貨として扱われます。豪ドル・カナダドル・NZドルの特徴や、資源価格が通貨へ影響する仕組みについては、「資源国通貨とは?」の記事で詳しく解説しています。
豪雇用統計が強くても、中国の景気減速、資源価格の下落、株価の急落などが意識されれば、豪ドルが売られる場合があります。
反対に、豪雇用統計が弱くても、中国経済への期待や資源価格の上昇によって、豪ドルが買われることがあります。
中国のPMI、GDP、鉱工業生産、輸入、不動産関連指標と、オーストラリアの輸出、資源価格、RBA、豪ドル相場との関係については、「中国経済指標はなぜ豪ドルに影響する?」の記事で詳しく解説しています。
相手側の中央銀行の材料が優先される
為替相場は、2つの通貨の相対関係で動きます。
豪雇用統計が強くても、FRBの利下げ観測が大きく後退すれば、米ドルが豪ドルより買われる場合があります。
日銀の利上げ観測が強まれば、円が豪ドルより買われ、豪ドル円が下落する可能性もあります。
強い経済指標でも通貨高にならない仕組みについては、「強い経済指標でも通貨高にならない理由とは?」の記事で詳しく解説しています。
豪雇用統計の発表時期と取引上の注意点
豪雇用統計は、ABSが原則として毎月公表します。
公表時刻は通常、キャンベラ時間の午前11時30分です。日本時間では、オーストラリア東部標準時の期間は午前10時30分、夏時間の期間は午前9時30分が目安です。
公表日は月によって異なり、変更される場合もあります。実際の日時は、ABSの公表予定や経済指標カレンダーで確認しましょう。
豪雇用統計の発表前後は、豪ドル相場が短時間で大きく動き、スプレッドの拡大やスリッページが発生する場合があります。
雇用者数、失業率、労働参加率が異なる方向を示すと、発表直後に一方向へ動いた後、反対方向へ転じることもあります。
FX初心者は、発表直前に新しいポジションを持たず、各項目の内訳、RBAの政策観測、豪州金利、豪ドル相場の反応を確認してから取引を検討する方法もあります。
豪雇用統計に関するよくある質問
豪雇用統計とは何ですか?
豪雇用統計とは、オーストラリアの雇用や失業の状況を示す労働市場統計です。
主に雇用者数増減、失業率、労働参加率、フルタイム・パートタイム雇用などが注目されます。
豪雇用統計はいつ発表されますか?
ABSが原則として毎月、キャンベラ時間の午前11時30分に公表します。
日本時間はオーストラリアの夏時間の有無によって変わるため、実際の日時はABSの公表予定や経済指標カレンダーで確認しましょう。
雇用者数が増えたのに失業率が上昇するのはなぜですか?
新しく仕事を探し始める人が増え、労働参加率が上昇した可能性があるためです。
雇用者数が増えていても、それ以上に労働力人口や失業者数が増えれば、失業率が上昇することがあります。
労働参加率とは何ですか?
労働参加率は、15歳以上の人口のうち、就業者と失業者を合わせた労働力人口が占める割合です。
労働参加率が上昇すれば、働いている人や仕事を探している人が増えたことを示します。
失業率の変化を判断するときは、労働参加率も組み合わせて確認することが大切です。
豪雇用統計が強いと豪ドル高になりますか?
必ず豪ドル高になるわけではありません。
雇用者数が市場予想を上回り、失業率が低下してRBAの利下げ観測が後退すれば、豪ドル高材料になる場合があります。
ただし、フルタイム雇用が減少した場合、結果が織り込み済みだった場合、豪CPIが弱かった場合、中国経済や資源価格が悪化した場合、相手側の中央銀行の材料が優先された場合には、豪ドル高が進まないことがあります。
まとめ|雇用者数・失業率・労働参加率を組み合わせて確認しよう
豪雇用統計は、オーストラリアの労働市場を示す統計です。雇用者数増減、失業率、労働参加率に加えて、フルタイム・パートタイムの内訳、不完全就業率、総労働時間を組み合わせて確認します。
強い雇用はRBAの利下げ観測を後退させ、豪ドル高材料になる場合があります。反対に、雇用悪化は利下げ観測を強め、豪ドル安材料になることがあります。
ただし、豪CPI、中国経済、資源価格、リスク環境、相手側の中央銀行によって、想定どおりに動かないこともあります。発表後は、RBAの政策観測、豪州金利、豪ドル相場の反応まで確認しましょう。

